内部資料入手「GoToトラベル事務局」大手出向社員に日当4万円
10/14(水) 16:01配信
10月1日から東京発着の旅行も対象に加わった政府の観光支援策「GoToトラベル事業」。その運営を担う「GoToトラベル事務局」に出向している大手旅行代理店社員に、国から高額な日当が支払われていることが、「週刊文春」の取材でわかった。
GoToトラベル事務局を構成するのは、全国旅行業協会(ANTA)などを除けば、業界最大手のJTBを筆頭に、近畿日本ツーリストを傘下に置くKNT-CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズという大手旅行代理店4社。この4社から各都道府県のGoToトラベル事務局に社員が出向する形を取っている。
「週刊文春」が入手した事務局の内部資料によれば、出向社員への日当として各社に支払われる金額は以下の通りだ。
→〈主任技術者=61,000円、理事・技師長=56,700円、主任技師=48,300円、技師(A)=42,600円、技師(B)=35,500円、技師(C)=28,600円、技術員=24,400円〉
国交省関係者が明かす。
「GoTo事務局の日当は、公共工事にかかわる調査及び設計業務を国が委託する際に支払う『設計業務委託等技術者単価』に準じた額で設定されています。公共工事の設計は、高度な専門性が求められる仕事。例えば『主任技術者』の場合、日当は69,800円と高額です。今回は旅行関係という仕事内容に鑑みて、その9割弱の金額が設定されました」
では、GoTo事務局の仕事は、その日当を受け取るのに、相応しいものなのか。
「旅行会社で言えば、支店長級が主任技術者、派遣社員は技術員、そして大半の出向社員は技師(A)~技師(C)という扱いです。彼らは主に、飲食店などの事業者に『地域共通クーポン』の取扱対象店への登録申請を促したりしている。といっても、飲食店に電話をかけて、『登録すると、こんなにお得ですよ』などと宣伝するような仕事に過ぎません。さらに問題なのは、会社での本来の仕事が忙しく、事務局での仕事はほぼしていないにもかかわらず、会社が高額の日当を受け取っているケースも珍しくないということです」(事務局関係者)
「事務局での仕事はほぼしていない」
『観光公害』(祥伝社刊)などの著書で知られる城西国際大学の佐滝剛弘教授(観光学)は次のように指摘する。
「この日当はいくらなんでも高過ぎます。コロナ経済対策の目玉として強行されたGoToトラベルですが、そもそも大手旅行代理店と比較的余裕のある利用者のみが念頭に置かれている。中小企業や貧困層など弱者救済の視点は全くなく、公共政策としては問題が多いと言わざるを得ない。政府は大手・経済優先の政策一辺倒から、弱者の視点に立った公共政策への転換をコロナを機に図っていくべきではないでしょうか」
元会計検査院局長で日本大学客員教授の有川博氏は指摘する。
「『設計業務委託等技術者単価』は高度な技術力と専門性を持った技術者に対し設定された単価です。国土交通省は、事務局の業務内容を明確化し、相応の技術力・専門性を有する人員が適切な規模で業務に従事していることを明らかにしなければ、〝闇雇調金〟と言われても仕方がない。本件は間違いなく会計検査の対象となりますので、今のうちに説明責任を尽くし、納税者の疑念を払拭してほしいですね」
大手4社に日当などについて問い合わせたところ、こう回答した。
「GoToトラベル事務局に一任します」
一方、GoToトラベル事務局を所管する観光庁は以下のように回答した。
「問題があるとは考えておりません」
GoTo事務局の出向社員に支払われる日当の原資は税金だ。GoToトラベルを巡っては、大手予約サイトが旅行代金の割引額を縮小するなど混乱も相次いでいるが、観光庁には行政の透明性確保の観点からも丁寧な説明が求められそうだ。
10月15日(木)発売の「週刊文春」では、GoTo事務局の日当問題のほか、事務局への出向社員数などを記した別の内部資料、JTBなど大手旅行代理店に有利な制度設計など、GoToトラべルに関する問題について詳報している。
「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年10月22日号
https://news.yahoo.co.jp/articles/e8ab62a19e867cd48237768813dbd253b1eb63d0